IB校が「ケンブリッジ」を選んだ理由 —茗溪学園、2027年度より中学に国際クラスを新設
取材・構成:山田亜希子(International Education Lab メディア担当)
取材協力:井上修(IEL上席研究員/茗溪学園中学校高等学校 校長補佐)
茨城県つくば市の茗溪学園中学校高等学校が、2027年度より中学1年生を対象に「ケンブリッジインターナショナルクラス(仮称)」を新設する予定だ。国際バカロレア(IB)のディプロマプログラム(DP)を高校段階で実施している同校が、中学段階の接続プログラムとして選んだのは、IBのMYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)ではなくケンブリッジのカリキュラムだった。その背景には、学校の歴史的な教育哲学と、グローバルな視点から見た戦略的判断がある。
詳細は茗溪学園の公式ページもご覧ください。
茗溪学園とIB—創設の精神が引き寄せた出会い
茗溪学園は、筑波大学(旧東京教育大学)の同窓会が設立した学校だ。難関大学合格よりも、教育の質と「自分で考える力」を育てることを創設当初から大切にしてきた。
IEL上席研究員であり同校の校長補佐を務める井上修氏はこう語る。「世界に出た後に活躍できる人を育てたいと考えたとき、国際バカロレアに出会いました。IBが最も大切にしているのは、世界平和 -みんなと協力して前に進んでいくということです。それが茗溪学園の建学の精神と非常によく共鳴していた」
IBのDPを導入したのは2017年。このタイミングには明確な理由がある。「2017年にIBの日本語プログラムが初めて完成したんです。英語だけのプログラムであれば以前から導入できなくはなかった。でも関わることができる先生の数が圧倒的に変わる。日本語対応ができたからこそ、全校規模で取り組める体制になりました」
33名全員がIBDP取得—積み上げてきた実績
導入から約8年。2025年春、IBDPを修了した33名が全員、DPの資格を取得した。
「45点満点で何点以上が何人いたか、というデータよりも、全員が取れたことの方がよほど大事なことです」と井上氏は言う。IBのDPは世界的に難易度が高いことで知られており、取得率100%という結果は、プログラムの定着と指導体制の成熟を如実に示している。
なぜMYPではなくケンブリッジなのか
DPへの接続プログラムとして一般的に選ばれるのはIBのMYP(11〜16歳対象)だ。しかし茗溪学園は今回、MYPを選ばずケンブリッジ・アセスメント・インターナショナル・エデュケーションのカリキュラム(ローワーセカンダリーおよびIGCSE)を採用することにした。
「MYPを導入する方向も当然検討しました。ただ、さまざまな事情があり、MYPは難しかった。でも世界を見渡したとき、ケンブリッジのIGCSEやローワーセカンダリーからDPへと進むルートは、すでに多くの学校で実績があります。そのケースを研究し、これで行こうという判断になりました」
実際、IBとケンブリッジの教育哲学は根本的に重なり合っている。「大学のゼミでやるような探究・研究を、もっと早い段階からちゃんとやる」という点が共通しており、探究型教育の土壌がすでにある茗溪の文化にも自然に溶け込む素地があった。
「茗溪には高校2年生が行う個人課題研究 -いわば17歳の卒論 -のような文化がもともとありました。だからMYPにこだわらなくていいし、ケンブリッジがすっとはまった、というのが正直なところです」
新コースの設計:国際教育と日本の強みを組み合わせる
新設のケンブリッジインターナショナルクラス(仮称)では、英語・数学・理科・社会のケンブリッジカリキュラムを導入しながら、文部科学省の学習指導要領に沿った日本の教育内容も並行して実施する。茗溪学園は一条校(日本の学校教育法上の正規の学校)であり、日本のカリキュラムを軸に国際カリキュラムを重ねる二重構造だ。
「特に理系教育については、日本の指導内容が非常に優れています。国際性のあるプログラムと日本のプログラムを両方経験した子たちは、世界で活躍できる素地が圧倒的に強くなる。今回の中学新コースの生徒たちが高校のDPに進んだとき、さらに大きく活躍してくれると確信しています」
「いいとこどり」が生む、次世代の人材
IBという高い国際基準の出口を持ち、ケンブリッジという中間の橋渡しをかけ、日本の理数教育という強固な土台を組み合わせる。茗溪学園が描くのは、グローバルと国内どちらの舞台でも通用する人材を育てるデュアルトラックだ。
「いいとこどりをする、というとシンプルに聞こえますが、それを本当に実行するには学校の文化がそれに耐えうるものでなければいけない。茗溪にはその土壌があると思っています」と井上氏は語った。
ケンブリッジインターナショナルクラスの詳細や最新情報は、茗溪学園の公式サイトにて随時公開される予定だ。今後の展開に注目したい。
International Education Lab 教育アナリスト/上席研究員
茗溪学園 校長補佐
『進学レーダー』や日能研の媒体を通した発信、週刊東洋経済、サンデー毎日、週刊ダイヤモンド、エコノミストなど各雑誌、アエラウイズキッズなどWEB媒体などでの寄稿、インタビュー記事など多数。各大学や私立中高一貫校、そして公立高校で、保護者、教員対象の教育講演会も多数。