【対談】スイス留学は、イギリスとアメリカと決定的に何が異なるのか?〜ハイジの待つ永世中立国スイス〜
多国籍環境と「人生を変える教育インフラ」
田山 貴子さん(以下、田山):スイス留学.com 代表/スイス在住25年以上
村田 学(以下、村田):International Education Lab(IEL)
スイス留学は、イギリスとアメリカと決定的に何が異なるのか?
「寮のある学校」といえば、多くのご家庭が「イギリス、スイス、アメリカ」を想像するのではないでしょうか。
では、具体的にイギリス、スイス、アメリカの学校の違いをご存じでしょうか。
国際教育のシンクタンクIELでは、各国の寮のある学校の違い(生徒構成や文化の違いなど)についてスイス留学.comの田山 貴子さんにお聞きしました。
スイス留学とは「国籍が主役」の教育環境
村田
今日は「スイス留学」にフォーカスしてお話を伺います。アメリカ・イギリスと並ぶ三大留学先として知られていますが、実際には何がどう違うのか。スイスというとアルプスの少女ハイジに出てくるサリバン先生のようなイメージがありますが。まず、スイスの学校環境の特徴から教えてください。
田山
一番大きな違いは「生徒の構成」です。アメリカやイギリスの学校は、基本的に現地生徒が多数派で、留学生は全体の20〜25%程度というケースが多いです。一方、スイスのボーディングスクールは、基本的にほぼ全員が留学生で20〜30か国ですが、多い学校では100か国以上から生徒が集まります。「スイス人が少数派」という学校も珍しくありません。
村田
なるほど。いわば“国籍が完全にミックスされた魔法学校”のような環境ですね
田山
まさにその表現が近いです。しかも多様性を保つため、国籍や言語ごとに受け入れ比率を制限している学校がほとんどです。一つの国・一つの言語が支配的にならないよう設計されています。
ボーディング前提だからこそ成立する教育設計
村田
イギリスのボーディング校だと、週末は現地生徒が自宅に帰り、留学生だけが寮に残るケースもありますよね。
田山
スイスはその点が違います。
留学生が前提なので、基本的に寮生活が学期を通して続きます。ガーディアン制度や週末の行き場を心配する必要がありません。
村田
中立国としての歴史や、金融・外交の立ち位置とも通じますね。「外から人を受け入れる前提」で社会も教育も作られています。
田山
そう思います。教育インフラとして、非常に完成度が高い国です。
学費が高い理由と「人脈」という価値
村田
正直に聞きますが、スイス留学は高いですよね。
田山
はい。はっきり言って高いです。多くの学校で、イギリス・アメリカよりも高額です。
理由は主に
- 教員人件費
- 広大なキャンパスと施設
- 全寮制運営コスト
そしてもう一つのスイス留学の特徴は「世界中から富裕層が集まる」という点です。
村田
卒業生ネットワークの話はよく聞きます。
田山
はい。同級生だけでなく、100年以上続く、世界中に広がる富裕層の卒業生ネットワークに入る。それは一生ものの人脈になります。
代表的な学校①:ル・ロゼ校(Le Rosey)
村田
スイス留学といえば、必ず名前が出るのがル・ロゼ校ですね。
田山
「世界で最も学費が高い学校」として有名です。2026年度の基本授業料と寮費は、初等部でCHF105,900で、既に2,000万円を超えます。中・高等部となると、CHF159,600で、約3,100万円です。これに加え、個別レッスンやオプショナルの旅行、学用品、制服等、数百万円は追加で必要です。
ル・ロゼ校で特徴的なのは「二つのキャンパス」を持つ点です。春〜秋は平地のキャンパス、冬の3か月はアルプスの高級リゾート地グシュタードへ移動します。
村田
3か月間、全校で移動するんですよね。
田山
はい。生徒も教職員も全員です。午前は通常授業、午後はスキー。自然の中で過ごす時間が、精神的な強さや人間関係を育てます。
代表的な学校②:エイグロン・カレッジ/ラ・ガレン校)
村田
もう一校、対照的な学校として挙げるなら?
田山
エイグロン・カレッジです。アルプスの山中に点在する寮とキャンパスを持ち、街全体が学校のような構造です。隣接するラ・ガレン校は4〜5歳から受け入れが可能で、幼少期から自然の中での全人教育を重視しています。
言語環境:英語+第二言語+母語
村田
言語教育はどうなっていますか?
田山
授業言語は基本的に英語です。加えて、フランス語やドイツ語を第二言語として学びます。さらに、多くの学校が母語教育を重視しています。日本人の場合、日本語教師を配置したり、IB日本語対応を行う学校もあります。
円安と今後のスイス留学
村田
最近、日本人留学生の動きはいかがですか。
田山
コロナ後に一度増えましたが、現在は円安の影響が非常に大きいです。今は本当に「上位層」でないと継続は難しいのが現実です。ただ、短期のサマースクールという選択肢もあります。ル・ロゼ校のように高額な場合、2週間で約8000スイスフラン。決して安くはありませんが、教育の質は非常に高いです。
円安と今後のスイス留学
村田
スイス留学は、単なる「海外進学」ではなく、世界の教育・人脈・価値観が交差する場所だと改めて感じました。
田山
はい。「教育」と「人生」を長期視点で考えるご家庭にとって、スイスは今後も重要な選択肢であり続けると思います。
田山・村田
ありがとうございました。
International Education Lab 所長 兼 上席研究員
国際教育評論家
インターナショナルスクールタイムズ株式会社を創立し、インターナショナルスクール専門メディアの運営とプリスクールを経営する。
株式会社Global Step Academy へ転身、インターナショナルスクールタイムズ編集長及び取締役学校事業統括責任者を歴任。
コロナ禍を経て、株式会社セブンシーズキャピタルホールディングスを創立し代表取締役に就任。政府・都道府県自治体向けのインターナショナルスクール誘致のコンサルティング業務及び国際教育評論家として各メディアに執筆をしている。
- 海外留学, スイス, 英語教育, インターナショナルスクール, 国際教育