子どもの英語教育は何をどうするべきなのか
実は「間違った英語学習」というのはあまりない
英検の級の取得、TOEIC L&Rのハイスコアを獲得するための勉強は何かと非難されがちですが、これは全く悪いことではありません。語彙や正しい文法を学ぶことは将来英語で勉強、研究をしたり、仕事をしたりするのにとても役に立ちます。
日本人が英語を使えないのは英語のアウトプットの訓練が足りないからであって、意味のない学習をしているからではありません。日本人の英語学習を非難している人は「きちんと英語が習得できていない、4技能のいずれかがCEFR B1以下の英語力の人」または「特定の英語学習教材や教育システムを販売しようとしている人」だと思っています。
英会話についても同様です。英語がきちんとできる人が教えている限り、意味のない英会話学習はありません。英語を聞き取る力、日常で使うプラクティカルな英語の知識とそれに応える瞬発力を得ることができます。何より楽しく英語を学ぶことはそこから先の英語学習への意欲につながります。
TOEFLやIELTS対策含め、4技能をしっかり学ぶことや、STEAMやPBLを取り入れた英語塾で時間を取ってハイレベルな英語のアウトプットにチャレンジすることも素晴らしい取り組みです。学校で学ぶことが難しい、4技能を一斉に育てる学びは、海外進学の準備や社会に出てから英語で仕事をする準備として大変役に立ちます。語学としての英語だけではなく、国際コミュニケーション力を鍛えていくことで、将来のボーダレスな活躍の可能性が広がります。
大事なのはそれぞれの学び方の長所・短所を理解すること
ただ、それぞれの学び方には上記のような長所もあれば気をつけるべきポイントもあります。
① 英検やTOEIC L&R対策などのインプット中心の学習
これはみなさんご存知の通り、アウトプットの練習をしないまま先に進んでしまい、スピーキングとライティングができない状態で高校卒業、大学卒業まで行ってしまうパターンです。でも心配しないでください。英検なら2級、TOEIC L&Rなら550点くらいを超えたCEFR B1くらいからアウトプットの練習を始めると、無闇に知識がゼロから始めるよりも短期間で英語のスピーキングやライティングの能力が伸びていきます。このタイミングさえ逃さなければ英語の4技能を揃えていくことは可能です。ただ、このCEFR B1レベルの到達のタイミングよりも早く4技能を習得しないといけない場合は、この方法は向きません。
②英会話スクールや英語学童などでの日常会話中心の学習
日本語の日常会話を想像していただければ分かるように、日常会話の中に出てくる単語は平易なものに限られてしまいますし、日常の口語の場合は文法が曖昧でも咎められることはありません。日頃のやりとりであれば語彙力が低くても、文法が雑でも問題ないのです。そして一般の「英会話」というのはここを軸にしています。つまり意思疎通が図れるということを第一の目的としています。ここでは「理路整然とした説明」や「表現豊かな説得」のような練習は含まれず、一定レベルから上の語彙、表現、文法を英会話スクールで学ぶことは難しいとされています。また、一般的に「英会話=楽しい、宿題がない」というイメージがあり、それに沿わないとお客様が集まらないということで、どうしてもエンタメ的なサービスを提供せざるを得ないケースも見られます。
③実践的な英語を4技能トータルで学習
これはまさに最近の需要に対して出てきたスタイルと言えます。一生懸命英語を勉強してきて、英検準1級を取った!TOEICも800点取った!つまり日本国内では高い英語力であるCEFR B2を取ったにも関わらず、いざ仕事で英語の商談、会議、プレゼンにチャレンジすると全く歯がたたないということを経験した保護者が、これはまずい!子どもにこんな思いをさせたくない!ということで、このタイプの塾に通わせたりしているように思います。塾形式で4技能をゴリゴリに教えるところもあれば、PBLやSTEAMの形で英語を使って考えたり話し合ったりする形式の学習を提供している教育機関もあります。このタイプの学習の落とし穴は「教師の質」です。4技能をしっかりやる、STEAMやPBLを通して英語を学ぶ、というコンセプトはまさに理想です。しかし、4技能をきちんと教えられる英語教師はネイティブでもそうたくさんいません。日本人の高校生が誰でも日本語の作文を教えられますか?できませんよね?それと同じです。また、STEAMやPBLなど作ることで学ぶ授業の指導は、ただ教師が持っている知識を教えるのと違って、主体的に考えさせる授業ですから、英語が話せるからといって指導できるものでもないのです。学校の教員が生徒にアクティブラーニングの授業をさせるのに苦労をしているのはみなさんもご存知でしょう。つまり、実践的な英語を学ばせているつもりで実はできていないパターンもあるのではないかということです。
英語を極めるためには無限の学習と努力が必要です
「英語ができるようになる」のゴール設定は人によってさまざまです。観光をしたり、簡単な会話を気軽に楽しみたいだけならCEFR B2レベルの習得がゴールになりますが、大学で研究がしたい、会社の国際業務で会議や交渉をバリバリこなしたい、となるとCEFR C1レベルが必要になります。さらに英語でコピーライターになりたい、小説家になりたい、英語圏のアナウンサーになりたい、という場合はCEFR C2も視野に入れないといけません。
よく「英語ができるようになったら映画を字幕なしで見たい」みたいな話を聞きますが、恐ろしいものでTOEIC満点とっても映画を字幕なしで完全に理解できるわけではないのです。言語の習得というのはそのくらい大変なことなのです。
そんな無限の範囲の学習の中で、本当に無限に学んでいかないといけないのかというとそういうわけではありません。先に書いたようにゴール設定はそれぞれです。そしてそのゴールに向かって、必要な部分を効果的な順番で学んでいくこと、これがそれぞれの子どもにとって必要な英語学習なのです。
もう一つ重要なのは、その英語学習が子どもにとってできるだけ苦痛にならないようにすることも大事です。英語は一度嫌いになるとなかなか戻ってくることができません。多少遠回りで、多少効率が悪くても、その子が好きな技能、興味のあるトピックを好きな仲間と、好きな先生と学ぶことも非常に大事です。
つまりその子によってベストな英語学習は異なります
これらを踏まえて、子ども一人ひとりに合った英語学習があります。これは子どもに限らず大人も同じです。大人になったら英語が習得できない、これも嘘です。幼児の頃から英語をやっていないと「ネイティブスピーカーにはなれない」というのを「英語ができるようにならない」と理解してしまっているだけです。私たちは英語のネイティブスピーカーになる必要はありません。CEFR C1もC2もあくまで「外国語としての習得レベル」を指しています。このネイティブ信仰をやめましょうという話は次回掲載します。
International Education Lab メディア担当/事務局
CTIS English Academy PBL英語カリキュラム設計・指導担当
ドイツとイギリスのインターナショナルスクールに通った後、帰国子女として立教大学文学部日本文学科に入学。卒業後は国際業務や新規事業の仕事を中心にメディア、IT、飲食、教育業界でプロジェクトリーダーから代表取締役まで務めた。会社の英語研修や新入社員や幹部候補の人材育成をしていく中で本格的に教育の仕事をすることを決心し、角川ドワンゴ学園でのPBLの企画や指導、カリキュラム編成、帰国子女向けの英語プログラムの企画や指導を担当。また、優秀層の生徒や教員のコーチングなども行なった。その後、キャピタル東京インターナショナルスクール(CTIS)立ち上げ直後から2年半、事業部長としてインターナショナルスクールのオペレーションを統括、現在はCTISの顧問をしながら2026年にスタートするCTIS English Academyのカリキュラム作成を行なっている。