日本の私立学校の分類 その① キリスト教と仏教

①キリスト教系と仏教系

私学には、創立時の理念があり、それに基づいて私学の教育は形作られます。今回は、そんな私学の理念と教育の形態などからタイプに分けて、以下で解説していくこととしましょう。インターナショナルスクールへの進学をお考えの方でも、私学(一条校)をも併願する傾向も最近は高まっているため、以下のタイプ別解説は役に立つのではないかと思います。第1回は、まずキリスト教系(カトリックとプロテスタント)と仏教系を紹介しましょう。

キリスト教系(カトリック)…もともと生徒指導は厳しめだったが、近年変化

カトリック校(抜粋)

男子校
栄光学園、暁星、サレジオ学院、聖光学院
女子校
浦和明の星女子、カリタス女子、光塩女子学院、晃華学園、白百合学園、湘南白百合学園、雙葉、横浜雙葉
共学校
サレジアン国際学園、サレジアン国際学園世田谷、聖ヨゼフ学園

プロテスタント校は各教派がありますが、基本は各教派が独立しています。概して、神とは神父などを介さず(ゆえにプロテスタントでは「牧師」と呼びます。宗派によっては牧師すらいない場合もあります)、自分で聖書を手にして「自主的」に対話するのがプロテスタントです(このあたり、各教派によって表現の違いもありますが、ご寛恕ください)。

そのため、「自主・自立」を大切にし、制服がない学校もあったりと、自由な校風も少なくありません。ただキリスト教との距離は、カトリック校よりも強いケースが多く、毎日の礼拝や、日曜日に教会に行くことを進めるケースも多々あります。

また、共学校、女子校が多くみられます。

キリスト教系(プロテスタント)…基本は自主自立校

 プロテスタント校(抜粋)

男子校
聖学院、立教池袋、立教新座
女子校
恵泉女学園、香蘭女学校、頌栄女子学院、女子学院、女子聖学院、捜真女学校、玉川聖学院、東洋英和女学院、フェリス女学院、普連土学園、横浜共立学園
共学校
青山学院、青山学院横浜英和、桜美林、関東学院、関東学院六浦、明治学院

宗教を理念に置く私学も数多くあります。その中でもキリスト教系の私学は人気校が目立ちますね。さて、国内のキリスト教系には大きく二つの流れがあります。まず一つ目はカトリック校です。カトリック校の大部分は、いずれかの教団組織が直接、または間接的に運営し、最終的には総本山のローマ教皇庁につながっています。

従来は男子校、女子校が中心でしたが、世界的な共学化の潮流と、国内の少子化による男女別学の募集の厳しさもあって、共学校化の流れが進行中です。おそらく、これから数年で驚くような共学化の流れがあるでしょう。またカトリック校は元来、生徒指導(しつけ)は比較的厳しかったのですが、これまた今変化の最中にあります。その一方で変わらないのはおおらかな校風。少人数の私学も多く、「家庭的」な雰囲気も変わらぬ特徴です。

後述するプロテスタント校との比較での話ですが、どちらかというとマイペースで大人しいタイプの方が向いているとも言えます(もちろん、全てではありません)。

仏教系…実は国際派

 仏教校(抜粋)

男子校
鎌倉学園、佼成学園、芝、世田谷学園
女子校
佼成学園女子、国府台女子学院、淑徳与野
共学校
駒込、淑徳、淑徳巣鴨、千代田国際、立正大学付属立正

実は日本の私学の中で最古のタイプです。おそらく、日本の私学の祖と言えるのが京都の洛南高校付属。なんと828年に空海によって創設された綜藝種智院を発祥とします。こう記すと、仏教系は保守的ではないかと考えてしまいがちですが、そもそもインドで発祥し、中国、朝鮮半島を経て日本に伝わったことを考えれば、そもそも仏教はグローバル。
さらに多くの仏教系で大事にされているのが「共生(ともいき)」。まさに地球共生を先駆けた考えです。長い時代を経て継承、発展してきた仏教ですが、時代に応じて革新していく力も強く、現在の言葉で言う国際理解教育などにも積極的に実践しています。
そうです。そもそも仏教は国際性が非常に高い宗教なのです。

井上 修

International Education Lab 教育アナリスト/上席研究員
茗溪学園 校長補佐

『進学レーダー』や日能研の媒体を通した発信、週刊東洋経済、サンデー毎日、週刊ダイヤモンド、エコノミストなど各雑誌、アエラウイズキッズなどWEB媒体などでの寄稿、インタビュー記事など多数。各大学や私立中高一貫校、そして公立高校で、保護者、教員対象の教育講演会も多数。

上部へスクロール